トーンモバイルに見る格安携帯SIMカードに「サービス」を求める選択

2015年4月30日に、「トーンモバイル株式会社」から新しいモバイルサービスが発表されました。

TONEモバイル

トーンモバイル株式会社」は、「freebit(フリービット)」から事業移転されたMVNO「フリービットモバイル株式会社」に、TSUTAYAを経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が出資し、誕生したものです。

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格安SIMカードの消耗戦が始まっている

マイネオやOCN等がTVコマーシャルも使って認知を得ようとしていますが、一方で格安SIMの通信費は価格競争によりかなり下がって来ています。

MVNO事業は、携帯電話事業と同様のストックビジネスですので、初期の獲得コストが掛かったとしても、月次のユーザー数が増えれば増えるほど収益が積み上がっていきます。

このモデルで成功したのが、Yahoo!BBであり、Y!mobile(旧SoftBankモバイル)ですね。

MVNOは、利用する回線の太さ(帯域幅)に応じて、「接続料」と呼ばれる卸売料金をNTTドコモ等の通信キャリアに支払っています。

つまり、損益分岐点を越えるユーザー数を獲得出来れば、そこから先はユーザー数が増えれば増えるほど利益が上がるというビジネスモデルです。

消費者が利用する端末と、ゲートウエイからインターネットにつながる基幹回線は、MVNOが自前で準備しますので、ここはユーザー数が増えれば設備投資が必要になりますが、スケールメリットも出やすい部分でもあります。

つまり、出来るだけ多くのユーザーを取り込んだ方がメリットが高いと言うことで、各社高額のTVコマーシャルを打ってでもユーザーを取り込みたいということです。

消耗戦に対してCCCの資本力と別のビジネスモデルで対抗

CCCは、既に2014年9月26日にCCCモバイルという会社を作っていましたが、2015年2月にフリービットとの提携によりMVNOのプレイヤーとなりました。

マイナビニュース:目指すは「手のひらTSUTAYA」? 家電小売への参入? – フリービットとCCCが戦略的資本・業務提携を発表

freebit mobile事業はフリービットから連結子会社であるフリービットモバイルが引き継ぐが、3月1日付けで社名を「トーンモバイル」に変更し、CCCおよびCCCモバイルを割当先とする第三者割当増資を実施するという。

フリービットは資本力があるCCCと組むことで、消耗戦を勝ち抜こうとしたのだと思われ、既にトーンモバイルでのTV CMも準備しているかもしれません。

ユーザー側から見ると、プレイヤーが増えて価格が下がる事は大変望ましく、回線を提供している会社が破綻しても元々の回線がNTTドコモやAUですから、最悪1ヶ月分の回線費用ぐらいのリスクぐらいしかなく、1ヶ月単位で契約できるところもおおいので、ブランドスイッチをしやすくなっています。

MVNOの業者としては、携帯電話の2年縛りのようなものがないと、ストックビジネスとしてのメリットがないため、ブランドスイッチをされるのは望ましくありません。

これに対して、フリービットモバイルから変わったトーンモバイルでは、回線とTカード、コンテンツを統合した形の「クロスセル」に加え、新たに「子供と老人向け」という切り口とTSUTAYAの店舗網を使ったリアルでのサポートを加え、端末もセットにする事で回線のみを販売する事業者とは異なるビジネスモデルで戦うことを考えているのだと思われます。

トーンモバイルでは、freebit mobileと、CCCグループの「TSUTAYA」、「Tカード」、エンターテインメントコンテンツなどを垂直統合した事業を展開。

CCCモバイルがfreebit mobileの販売代理店を開拓し、フリービットはトーンモバイルへネットワークと端末の調達をはじめとするバックエンドを提供する形になる。

利用シーンに応じてサービス選択をする時代に

格安SIMカードは、確かに月額料金を大幅に下げる事が出来ますが、その代わりに回線品質も格安SIMはお昼時間帯で通信速度が低下「2015年4月格安スマホ通信速度調査」で述べたように大幅に下がります。

そのため、私のように普段は無線LAN環境があって、外に出る時だけ使うのでない限り、通信キャリアの回線品質が必要な方も多いでしょう。

ただ、格安SIMがいくら安いと言っても端末の購入費は別途必要ですし、親の回線契約に加えて子供のために追加で数千円の費用を支払うのは、家計的には負担となります。

iPhone Mania:マイクロソフトが8,400円の格安スマホを全世界で発売決定、日本も続くかというニュースもあり、端末についても格安のものがこれからどんどん出てくることが予想されます。

しかし、一方ではこの記事のように値段が安いと言う部分だけでは格安SIMカードのサービスに満足が出来ないユーザー層も存在します。

日経ビジネスONLINE:シニア記者、スマホ勉強会で逆上す MNOからMVNOにMNPするのだ!

「最後に『店頭でのサポートがない』ですが、これもそんなに頻繁に店頭サポートが必要でしょうか?」

あ、それもぜったいに必要。

これに対しトーンモバイルの、回線品質はそれなりで端末の機能も必要最低限しかありませんが、TSUTAYAの実店舗網によるユーザーサポートをつけて回線が端末とセットで月額2,000円で提供されるのは一つの選択肢としてありでしょう。

このように、生き残りを図るために通信費の安さだけではなく、リアルの店舗網や見守り機能といったサービス面での差別化を取る戦略を取る会社が出てきたことで、自分が重視するサービスに応じた選択が出来るようになってきたと言えるのではないでしょうか。

何を優先するかで選択を

ただし、その選択の中に「トーンモバイル株式会社」が入るかというのは別の問題です。

現時点では、TONEストア(旧「ATELIER freebit」)に加えて、TSUTAYAが直営する地域基幹店12店舗の合わせて16店舗しかMNPの即日転入やサポート受付ができません。

また、回線や端末についてはLTEに対応しておらず、「トーンモバイル株式会社」の元となった「フリービットモバイル株式会社」のサービスレベルに対する問題もあります。

ITmedia mobile:安いだけではダメ:freebit×CCC――トーンモバイルが「TONE」で変える5つのこと (2/2)

垂直統合の要のひとつである端末が「PandA 3rdLot」とほぼ同じであることには不安を感じた。ファームウェアの改良もあり、動作はキビキビとして快適なのだが、今の時期にLTEに対応しておらず、しかもOSがAndroid 4.2.2であることはどうなのだろうか。

自由に選択が出来るようになった一方で、判りにくい情報から自分に合った回線契約を結ぶ必要があるとも言えますので、人によっては上で紹介したシニア記者のように、「格安SIMは安いがサービスが悪い」「自分にマッチしていないサービスは悪いサービス」と感じる場合も多々あると思います。

しかし、競争が激しくなって価格が下がり、選択の幅も広がるのはユーザーにとっては大変望ましいので、携帯電話も自分に合った回線を選ぶための基準を価格、回線品質、付加サービスの何処に置くかを決めて選ぶ時代になって来たと言えます。

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